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まぼろしの大阪府営西長堀アパート(非給水塔記事)

(2016年2月21日 大幅に加筆)

西長堀アパート外観

昭和33年に完成した公団西長堀アパート。
東京の晴海高層アパートと並ぶ、言わずと知れた日本住宅公団最初期の傑作高層住宅です。
司馬遼太郎や森光子など、当時のいわゆるセレブが入居していたことでも有名。
リフレッシュ工事を経て、2016年2月に入居募集が再開されることとなりました。

UR都市機構 関西エリア 【西長堀】(大阪市西区)

西長堀アパート吉原治良壁画
団地とともに設置された吉原治良氏の壁画。近年は壁に覆われ鑑賞できない状態でしたが、こちらも再び日の目を見る事に。

そんな西長堀アパート。
実は府営住宅として建っていたかもしれないのです。
nishinagahoriDSC_0679_DxO.jpg

「あの公団の名作団地が府営住宅?そんなアホな話あるかいな」
という声が聞こえてきそうですが、あるのです。

東京都が日本初の高層分譲集合住宅として、渋谷に宮益坂ビルディングを作ったのが昭和28年。

(参考)
宮益坂ビルディング(宮益坂アパート) - 日本給水党はてな支部

東京が建てたのだから大阪でも高層を!
ということで昭和29年、大阪府初の高層団地建設構想が持ち上がりました。

現在西長堀アパートが建っている土地を三菱から購入し、用地買収は完了。
約1年かけて設計図も完成し、あとは発注を待つばかりといった段階でした。


nishinagahorinishinagahori.jpg
(日本住宅協会機関紙「住宅」昭和30年1月号より)

ご覧のとおり模型もできていました。
この模型は設計図とともに難波の高島屋で展示もされています。
西長堀アパートの別名「マンモスアパート」はこの時朝日新聞が名づけたものです。

nishinagahoriDSC03085_DxO.jpg
これが実際に建っている西長堀アパートの姿。
東側のデザインは模型とほぼ同じです。

ここまで用意できていたものの、当時の知事と建築部長との間で高層建設についての合意が得られず、事業は暗礁に。
そうこうしているうちに昭和30年7月、日本住宅公団が発足。

住宅の大量供給という使命を与えられながら、発足当時の公団は当然ながら土地を持っていません。
そこで各自治体に土地を現物出資するよう依頼があり、大阪府からはこの西長堀の土地が提供されたのです。
(ちなみに、公団賃貸住宅第1号の金岡団地の土地も大阪府が提供したもの)

さらに設計図や、大阪府住宅課長の元吉勇太郎氏はじめ府の職員数人もこの時公団に異動していきました。
元吉氏は公団大阪支所計画部長になり、引き続き西長堀アパート建設に関わっています。
そして出来上がったのが現在の公団(現UR都市機構)西長堀アパート。

nishinagahoriDSC02036_DxO.jpg
基本的には大阪府の設計図をもとに作られていますが、この特徴的な北側立面のファサードは公団に移ってから設計されたもの。大阪府の案では、模型を見ても分かるとおり廊下は壁で覆われず、吹きさらしの状態でした。
当時の雑誌には、
「当初オープン式廊下の計画をたてて建設費の減少を計ったが、高層故の強い風当りを防ぐために、クローズすべく幾つかの案をたて、その機能・意匠及び費用を比較検討した結果、最も適当と思われるこの案を採用したのである」と書かれています。
(「日本住宅公団・西長堀高層アパート」『国際建築』1959年1月号,P27,美術出版社)


設計も用地買収も完了し、あとは発注というところまでいきながら、最終的には公団住宅に…。
完全な幻になった訳ではないにせよ、やはり当時の府職員は悔しかったそうです。
その後、大阪府が実際に高層団地を手がけるのは昭和43年の大阪府営東三国高層住宅まで待つことになります。

大阪府営東三国高層住宅
その府営東三国高層住宅も耐震強度不足等の問題により解体され、既に存在しません。


当初は大阪府営住宅として企図された西長堀アパートですが、ここまでこの稀有な建物を維持・管理し募集再開にまでこぎ着けたのは、まぎれもなく公団~UR都市機構職員や住民のみなさんの努力と愛情があったからこそ。

東京では晴海高層アパートはとうの昔に解体され、宮益坂ビルディングも今春(2016年)解体される予定。
そんな中で、リフレッシュ工事を経て再び入居募集がされる西長堀アパートの存在はますます輝かしく映ります。

【参考リンク】
建築マップ 大阪府[西長堀アパート]1/2
西長堀アパート トークイベント&案内会へ行ってきました! : 名古屋の団地女子 (愛知名古屋の団地写真)

【参考文献】
「高層アパート讃」『住宅』(1954年12月号)pp40.社団法人日本住宅協会
「日本の住宅1952~54」『住宅』(1955年1月号)pp19-22.社団法人日本住宅協会
元吉勇太郎(1955) 「大阪府高層アパート計画」 『建築と社会』 (1955年3月号) pp.11-13. 社団法人日本建築協会
高橋慶夫、長田正雄、上田宏二(1957) 「大阪市高層アパートの構造計画について」 『建築と社会』 (1957年5月号) pp.28-32. 社団法人日本建築協会
「府営住宅の歩み」(1985)大阪府建築部住宅建設課
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